本名Malcolm James McCormick、通称Mac Millerは1992年1月19日、ペンシルベニア州ピッツバーグのポイントブリーズ地区に生まれた。10代からミックステープを自主リリースし、2011年のデビューアルバム『Blue Slide Park』ではBillboard 200初登場1位を獲得。当初は陽気でパーティー志向のイメージで人気を博したが、キャリアを重ねるごとに音楽的な深みと内省性を増し、Hip-Hopの枠を超えたアーティストへと成長していった。

Mac Millerの真価が広く認識されるようになったのは、2010年代半ば以降だ。『Faces』『GO:OD AM』『The Divine Feminine』、そして2018年の『Swimming』では、ジャズやソウルの要素を取り入れた繊細なプロダクションと、うつや薬物依存、恋愛関係の破局といった痛みを率直に綴るリリックで、多くのリスナーの共感を集めた。特に『Swimming』は批評家から絶賛され、彼の死後にグラミー賞Best Rap Albumにノミネートされている。

プロデューサーとしての才能も特筆すべき点だ。Larry Fisherman名義で自身の作品はもちろん、Vince StaplesやAriana Grande(元パートナー)の楽曲にも携わり、多才なミュージシャンとして高く評価されていた。飾らない人柄とファンとの距離の近さも彼の魅力であり、その突然の死は音楽シーンに大きな衝撃を与えた。

2018年9月7日、Mac Millerはカリフォルニア州ロサンゼルス、スタジオシティの自宅で意識不明の状態で発見され、その日のうちに死亡が確認された。享年26。ロサンゼルス郡検死局は死因を「事故死」とし、フェンタニル、コカイン、アルコールが複合的に作用した薬物中毒(“mixed drug toxicity”)によるものと発表した。

その後の捜査で、彼にフェンタニル入りの偽オキシコドン錠を売った売人を含む3人の男(Cameron James Pettit、Ryan Michael Reavis、Stephen Andrew Walter)が薬物流通に関する連邦の罪で起訴され、それぞれ有罪判決を受けている。Mac Millerの死は、フェンタニルが引き起こす薬物危機の深刻さを社会に広く知らしめる出来事ともなった。

死後にリリースされた遺作『Circles』(2020年)は、生前の彼が構想していた『Swimming』との対の作品であり、そのタイトル通り「巡る」人生と死を静かに見つめる内容として、多くのファンに惜しまれながら受け入れられた。

2026年で没後8年。Mac Millerが遺した音楽は、今も多くのリスナーの心の支えであり続けている。

▶︎ “Self Care”『Swimming』からのこの曲は、自身との向き合い方や心の平穏をテーマにした一曲。ミュージックビデオでは棺桶から蘇るという象徴的な演出が話題となり、公開当時から「死と再生」のメタファーとして解釈され、彼の死後は特に多くのファンの間で語り継がれる作品となった。

▶︎ “Good News”死後初のシングルとして2020年にリリースされた楽曲で、遺作『Circles』の先行曲。穏やかなギターサウンドに乗せて「もう十分頑張った」と歌うリリックは、多くのリスナーの涙を誘い、彼の死を悼むと同時にその音楽的遺産を象徴する一曲として広く愛されている。