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1985年8月15日、カリフォルニア州ロサンゼルスのサウス・ロサンゼルスに、エルマイア・アスゲドム・ジョセフという名の男が生まれた。世界は彼をNipsey Hussleと呼ぶ。南ロサンゼルスのクレンショー地区で育ち、ティーンエイジャーの頃にギャング組織Rollin’ 60s Cripsに関与しながらも、独学で音楽制作とビジネスを学んでいった。2005年頃からミックステープのリリースを重ね、長きにわたって自立したインディペンデント・アーティストとして地道に歩み続けた男だ。

Nipsey Hussleの偉大さはラップのスキルにとどまらない。2013年、彼は1000枚限定の『Crenshaw』ミックステープを100ドルで販売するという前代未聞のビジネスモデルを打ち出し、Jay-Zが100枚を即座に購入したことで話題を呼んだ。これはHip-Hopにおける自立型エコノミーの先駆けとして高く評価されている。

2018年リリースの初メジャーアルバム『Victory Lap』はグラミー賞の「Best Rap Album」にノミネートされ、長年の独立した道のりへのご褒美のように批評と商業の両面で成功を収めた。しかし彼の真の遺産はクレンショー地区への還元にある。STEM教育施設への支援、地元ショッピングモールへの投資、地域の若者のためのビジネスレクチャーなど、自分が育った街を変えることに人生を賭けた。

2019年3月31日、Nipsey Hussleは自らの店の前で銃撃され、33歳という若さでこの世を去った。彼の死はロサンゼルスのみならず世界中のHip-Hopファンに深い悲しみをもたらし、バラク・オバマ元大統領も追悼文を寄せた。「ザ・マラソン・コンティニューズ」という彼の言葉は今なおアンセムとして生き続けている。

2026年は生誕41周年にあたる。

▶︎ Nipsey Hussle – “Racks in the Middle” ft. Roddy Ricch & Hit-Boy(2019)

死去の直前にリリースされた本曲は、2020年のグラミー賞「Best Rap Song」を受賞した。Roddy RicchとHit-Boyをフィーチャーし、インディペンデントな姿勢を保ちながら頂点へ至ったNipseyの確信に満ちたラップが光る。彼の遺作となったこのMVは、世界中のファンへの最後のメッセージとなった。

▶︎ Nipsey Hussle – “Double Up” ft. Belly & Dom Kennedy(2018)

『Victory Lap』収録曲。地元クレンショーの路上で撮影されたこのMVは、彼のルーツへの誇りとコミュニティへの愛着を真っ直ぐに映し出す。BellyとDom Kennedyとの三者鼎立のマイクリレーが心地よく、Nipseyの哲学が凝縮された一曲だ。