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今年5月に“ロックの殿堂”こと“Rock and Roll Hall of Fame”にめでたく殿堂入りを果たしたラッパーのJAY-Z(ジェイ・Z)。また、彼は今年3月に発表された第63回グラミー賞でも、フィメールラッパー Megan Thee Stallion(ミーガン・ジー・スタリオン)の楽曲 “Savage”の共作者として最優秀ラップ楽曲賞を受賞している。今ではすっかりこのような賞の常連となったJAY-Zだが、最近出演したテレビ番組『The Shop:Uninterrupted』で、1999年に初めてグラミー賞を受賞した時の思い出を語った。

JAY-Zはグラミー賞においてこれまで23回の受賞、80回のノミネートを誇り、“グラミー賞の受賞数が最も多いラッパー”および、Quincy Jones(クインシー・ジョーンズ)と並び“グラミー賞のノミネート数が最も多いアーティスト”として知られている。そんなJAY-Zが初めて同賞を受賞したのは、1998年に発表したアルバム『Vol.2…Hard Knock Life』が最優秀ラップ・アルバム賞を獲得した時。この授賞式は1999年に行われたが、なんと彼は同式典をボイコットして出席しなかったのだ。先述の番組でその理由について問われたJAY-Zは、盟友であるラッパーの故 DMX(ディー・エム・エックス)のためにボイコットしたことを明かした。というのもDMXは1998年5月にデビューアルバム『It’s Dark and Hell Is Hot』を、同年12月にも2ndアルバム『Flesh of My Flesh, Blood of My Blood』をリリースし、両アルバムとも全米チャート1位を記録したが、どちらもグラミー賞にはノミネートすらされなかったのである。JAY-Zはこれを不服に思い、自身初の受賞にも関わらず式典に出席しなかったという。「彼(DMX)は私に対して強い競争心を持っていた。私は今まであれほど激しい競争心を持っている人間には会ったことがありません。私の兄でさえも、誰にもね」

また、JAY-ZはDMXとの出会いや思い出について語った。「私たちは(ニューヨーク州)ブロンクスのビリヤード場で行われたラップ・バトルで出会ったんだ。その後、彼のショーを観に行ったらステージの上から“JAY-Z、どこにいるんだ!?”って叫んでたよ(笑)。彼は情熱の塊のような男だった」。さらに、JAY-ZはDMXとの“最も素晴らしい思い出”として、Method Man(メソッドマン)やRedman(レッドマン)、Ja Rule(ジャ・ルール)、The Lox(ザ・ロックス)らと1999年に行った全米50都市を巡る伝説のツアー “Hard Knock Life Tour”を挙げている。「彼(DMX)は私のステージパフォーマンスを向上させてくれたんだ。当時はラップのツアーなんて他に存在しなかった。1980年代にはあったかもしれないけど、もっと小規模なものだっただろう。このツアーは全公演満員で、初日の夜は360席のチケットが全て完売。みんな素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。MethとRedは客席で飛び跳ねてるし、信じられない盛り上がりで、みんな暴れ回っていたよ。そして、DMXの音楽が流れるとアリーナが“揺れ始めた”。彼の独特のラップが会場に響き渡ったとき、観客全員がクレイジーになったんだ」

JAY-Zは先日リリースされたばかりのDMXの遺作アルバム『EXODUS』にも客演で参加している。もし同アルバムが今年のグラミー賞にノミネートされた場合、来年3月に開催予定の同賞の授賞式で、JAY-Zら参加アーティストによるDMXへの追悼パフォーマンスが行われるかもしれない。少々気が早いかもしれないが、そんなことを期待しつつ、今年は『EXODUS』を聴き込んでおこう。