Nasの「One Mic」は、彼のキャリアの中でも最も優れたリリカル・パフォーマンスの一つとされ、ラップ界のアイコンとしての輝かしいカタログの中でも決定的な楽曲の一つと評価されています。
「One Mic」は、Nasの5枚目のソロ・アルバム『Stillmatic』からの3rdシングルとしてリリースされ、評論家から高く評価されるとともに商業的にも成功を収め、Billboard Hot 100で最高43位を記録しました。
しかし、故プロデューサーのChucky Thompsonによると、この曲は当初、もう一人の伝説的アーティストである故ヒップホップスターDMXをフィーチャーする予定だったといいます。
ただし、そのコラボレーションは最終的に実現しませんでした。理由は、Nasがライブで同曲を披露する際に毎回DMXを呼ばなければならなくなることを懸念したためです。
Thompsonは、2021年に亡くなる前に行われたVIBEの独占インタビューで「One Mic」の制作秘話を語り、当時Nasのレコーディング中にDMXが実際にスタジオにいて、必要であればすぐに録音できる準備ができていたと明かしました。
Thompsonは「すごいのは、あのときDMXもスタジオにいたんだ。実際に参加する寸前のとこだった。でもNasは『曲にDMXを入れると、ライブで毎回彼を呼ばなきゃいけなくなる。それならこのまま出すよ』と言ったんだ。ただパフォーマンスを考慮しただけのことだった。もしこれが実現していればHip-Hop的に劇場的な瞬間だったかもしれない。」と語った。
このコラボが実現していれば、DMXとNasにとって複数ある共演曲の一つになっていたでしょう。2人はこれまで「The Grand Finale」、「Life Is What You Make It」、「Sincerity」などで共演しており、直近ではDMXの死後にリリースされたアルバム「Exodus」に収録された「Walking In The Rain」と「Bath Salts」でも共演しています。
また、2人は1998年公開のHype Williams監督による犯罪スリラー映画『Belly』で共演しており、この作品もニューヨーク出身の両者を結びつける存在となっています。
Thompsonはまた、「One Mic」が発表されたタイミングについても語りました。当時、NasはJAY-Zとの激しいリリカルなビーフの最中であり、この曲は2人の争いを落ち着かせる役割を果たしたと彼は考えています。