1996年7月7日、東京・日比谷野外大音楽堂にて、日本初の大規模なヒップホップイベント「さんピンCAMP(THUMPIN’ CAMP)」が開催された。提唱者はラッパーのECD。当時の日本のヒップホップシーンでは、ECD主催の「CHECK YOUR MIKE」やYOU THE ROCK★主催の「ブラック・マンデー」、雷家族のイベント「亜熱帯雨林」など、クラブを舞台にした複数アーティスト出演型のイベントは数多く開催されていたが、野外音楽堂のような大会場を使用するほどの規模のイベントはそれまで存在しなかった。
シーンが拡大し、ヘッズたちの熱気が高まっていく中で企画された「さんピンCAMP」は、当時の日本語ラップ・シーン最大規模のキャパシティで開催されたイベントとなった。当日は雨に見舞われたが、それでも数多くのヒップホップヘッズが日比谷野音に詰めかけたという。
「さんピンCAMP」には、提唱者のECDをはじめ、YOU THE ROCK★、LAMP EYE、ZEEBRA(キングギドラ)、RHYMESTER、DEV LARGE(BUDDHA BRAND)、SHAKKAZOMBIE、SOUL SCREAMといった、当時の日本のヒップホップシーンを代表するアーティストたちが多数集結した。BUDDHA BRANDはこの年の5月にシングル”人間発電所”でメジャーデビューを果たした直後であり、本イベントへの出演がそのインパクトをさらに全国へと広げるきっかけの一つとなった。
イベント冒頭でECDが発した「J-RAPは死んだ、俺が殺した」という言葉は、後に「日本語ラップ」という呼び方が広く定着していく上での象徴的な一言として、今でも語り継がれている。
「さんピンCAMP」が伝説と呼ばれる最大の理由は、その後VHS・DVDとして映像化されたことで、当日会場に来られなかった全国のリスナーにもその衝撃が広がったことにある。映像を通じてこのイベントを目撃した次世代のラッパーたちは、ここで描かれた「日本語でヒップホップをやる」という姿勢に大きな影響を受け、1990年代後半から2000年代にかけての日本語ラップシーンの拡大へとつながっていった。
開催から20年後の2016年7月10日には、同じ日比谷野外大音楽堂で「さんピンCAMP20」として復活イベントが開催され、約3,000人の観客を集めてAbemaTVで生中継されるなど、再びシーンを盛り上げた。そして2026年7月7日には、開催からちょうど30周年を迎える。音楽ナタリーでは関係者や出演アーティストへのインタビューを通じて「さんピンCAMP」の全貌に迫る連載企画も実施されており、30年経った今でもこのイベントが日本のヒップホップ史、そして日本のポップカルチャー史において欠かすことのできない重要な一日であることを物語っている。
2026年で「さんピンCAMP」開催からちょうど30年になる。