1971年10月27日、本名・清水和之ことILL-BOSSTINOは北海道亀田郡七飯町大中山に生まれた。市立函館高等学校では一年間の休学を経験し、配管工として働いていた時期もある。その後進学した札幌大学経済学部時代、すすきののクラブやキャバクラで働きながらヒップホップカルチャーにのめり込んでいく。Nasの『Illmatic』のライナーノーツを読み込んだことが、自身の作詞への向き合い方を大きく変えたという。1997年、トラックメイカーのO.N.Oと共に札幌でTHA BLUE HERBを結成。グループ内ではBOSS THE MC、外部作品ではILL-BOSSTINO、2015年からはtha BOSS名義でソロ活動も行うなど、複数の名義を使い分けながら活動を続けている。
THA BLUE HERBの最大の特徴は、東京中心だった日本のヒップホップシーンに対し、あえて拠点を札幌に置き続けたことにある。「東京に出て音楽なんて古いんだ 地元も仕切らずに何歌う気だ」というリリックが象徴するように、メジャーレーベルに頼らず自主レーベルTHA BLUE HERB RECORDINGSを通じて作品を発表し続けるインディペンデントな姿勢は、日本のインディーヒップホップの気風を切り拓いたと評価されている。The Japan Timesはかつて彼らを「日本のヒップホップにおけるCompany Flow」と評した。恋愛をテーマにせず、社会的でありながら文学的・哲学的な言葉選びを貫くそのスタイルから、ILL-BOSSTINOは「哲学する詩人」とも称される。
1999年の1stアルバム『STILLING, STILL DREAMING』を皮切りに、2007年の『LIFE STORY』(オリコン15位)、2012年の『TOTAL』など、一貫して高い評価を受けるアルバムをリリース。晋平太、R-指定、DOTAMAといった後続世代のラッパーへの影響を公言する声も多く、フジロックフェスティバルをはじめとするロックフェスの舞台にラッパーが立つ道を切り拓いた存在としても知られている。
2026年で生誕55年を迎えるILL-BOSSTINO。中央から距離を置きながらも中央に依存しない独自の道を歩み続けるその姿勢は、今なお多くのアーティストにとっての指標であり続けている。
代表作 Music Video
▶︎ “この夜だけは” 2007年の『LIFE STORY』に収録されたこの曲は、EGO-WRAPPINの中納良恵をフィーチャーした一曲。初期の対立的なリリックから、より内省的で朗読詩に近いスタイルへとグループが深化していったことを示す代表曲だ。
▶︎ “バラッドを俺等に” 2020年のミニアルバム『2020』のリード曲。ライブ映像と楽屋裏の様子を交錯させた演出のミュージックビデオが印象的な一曲で、長きにわたり第一線であり続けるTHA BLUE HERBの現在地を伝えている。