1996年7月2日、Nasの2作目のスタジオアルバム”It Was Written”がColumbia Recordsからリリースされた。1994年のデビューアルバム”Illmatic”は批評家から絶大な評価を受けたものの、商業的には控えめな成功にとどまっていた。Nasはその反省を踏まえ、よりメインストリームを意識したサウンドへと方向転換を図り、本作の制作にはTrackmastersを中心としたプロデューサー陣を起用した。
“It Was Written”は”Illmatic”の生々しくアンダーグラウンドな質感から一転し、洗練されたマフィオーソ・ラップの世界観を打ち出した作品だ。アルバムは初週27万枚を売り上げ、Billboard 200で初登場1位を獲得。これはNasにとって商業的な最大の成功作となり、現在もキャリア最高セールスを記録するアルバムとして知られている。
本作にはNasによる短命のスーパーグループ The Firm の初登場となった楽曲が収められており、Foxy Brown、AZ、Cormegaといったアーティストとの共演も話題を呼んだ。リードシングル”If I Ruled the World (Imagine That)”はLauryn Hillをフィーチャーし、第39回Grammy AwardsのBest Rap Solo Performance部門にノミネートされるなど、批評的にも高い評価を獲得。一方で、よりコマーシャルな方向性への変化は一部のヒップホップ・コミュニティから「セルアウト」という批判を受けることにもなったが、それすら本作の影響力の大きさを物語っている。Raekwonの”Only Built 4 Cuban Linx…”やJay-Zの”Reasonable Doubt”と並び、1996年を代表するマフィオーソ・ラップの傑作として、2024年にはBillboardの「100 Greatest Rap Albums of All Time」にも選出された。
2026年で本作はリリースから30周年を迎える。
▶︎”If I Ruled the World (Imagine That)” feat. Lauryn Hill “It Was Written”のリードシングルとして1996年にリリースされたこの曲は、Kurtis Blowの同名曲をベースに、Whodiniの”Friends”のビートをサンプリングしている。Hype WilliamsとRon Norsworthyによる豪華なミュージックビデオはNasにとって初めて主流メディアの注目を集めた作品となり、今でも90年代を代表するヒップホップ・クラシックの一つとされている。
▶︎”Street Dreams” アルバムの2枚目のシングルで、Eurythmicsの”Sweet Dreams (Are Made of This)”を引用したフレーズと、Linda Cliffordのサンプルが印象的な一曲。Hype Williams監督によるミュージックビデオは映画”Casino”へのオマージュとしてラスベガスで撮影され、俳優Frank Vincentや元Miss USAのKenya Mooreが出演した大作だ。この曲はNasにとって初めてBillboard Hot 100でトップ50入りを果たした楽曲となった。