1996年7月7日、東京・日比谷野外大音楽堂にて、日本初の大規模なヒップホップイベント「さんピンCAMP(THUMPIN’ CAMP)」が開催された。提唱者はラッパーのECD。当時の日本のヒップホップシーンでは、ECD主催の「CHECK YOUR MIKE」やYOU THE ROCK★主催の「ブラック・マンデー」、雷家族のイベント「亜熱帯雨林」など、クラブを舞台にした複数アーティスト出演型のイベントは数多く開催されていたが、野外音楽堂のような大会場を使用するほどの規模のイベントはそれまで存在しなかった。
1975年7月6日、50 Centはニューヨークのサウスジャマイカ、クイーンズで生まれた。本名はCurtis James Jackson III。幼少期に母を亡くし、祖母のもとで育ちながらストリートでハスリングを経験した彼は、その実体験をリリックに刻み込み、後にラップ界屈指のストーリーテラーとなっていく。9歳という若さで音楽活動を始め、Jam Master Jayに見出されたことが彼のキャリアの大きな転機になった。
50 Centの名を一夜にして全米に知らしめたのは、2003年のデビューアルバム”Get Rich or Die Tryin'”だ。Eminemのレーベル Shady Records、Dr. Dreの Aftermath Entertainment、そして自身の G-Unit Records という強力なバックアップを得てリリースされたこの作品は、Billboard 200で初登場1位を記録。シングル”In Da Club”はBillboard Hot 100で1位を獲得し、2003年のMTV Video Music Awardsでは Best Rap Video と Best New Artist を受賞した。
▶︎”In Da Club” 2003年にリリースされたこの曲は、Dr. DreとEminemが手がけたデビューシングルであり、Philip Atwellが監督した映像作品は2003年のMTV Video Music Awardsで Best Rap Video と Best New Artist を受賞した。架空のラボを舞台にしたSF的な世界観の中で50 Centが「誕生」する様子が描かれ、ヒップホップ史上最も再生されたミュージックビデオの一つとして、2020年にはYouTubeで10億回再生を達成している。
▶︎”21 Questions” feat. Nate Dogg “Get Rich or Die Tryin'”からの2枚目のシングルで、2003年にBillboard Hot 100で1位を獲得した。それまでのギャングスタなイメージとは対照的に、恋愛をテーマにしたR&B色の強いラブソングとして制作され、Nate Doggをフィーチャーした初の全米チャート1位ソングとなった。ストリートの硬派なイメージを持つ50 Centの新たな一面を示した楽曲として、今でも多くのファンに愛されている。
1996年7月2日、Nasの2作目のスタジオアルバム”It Was Written”がColumbia Recordsからリリースされた。1994年のデビューアルバム”Illmatic”は批評家から絶大な評価を受けたものの、商業的には控えめな成功にとどまっていた。Nasはその反省を踏まえ、よりメインストリームを意識したサウンドへと方向転換を図り、本作の制作にはTrackmastersを中心としたプロデューサー陣を起用した。
“It Was Written”は”Illmatic”の生々しくアンダーグラウンドな質感から一転し、洗練されたマフィオーソ・ラップの世界観を打ち出した作品だ。アルバムは初週27万枚を売り上げ、Billboard 200で初登場1位を獲得。これはNasにとって商業的な最大の成功作となり、現在もキャリア最高セールスを記録するアルバムとして知られている。
本作にはNasによる短命のスーパーグループ The Firm の初登場となった楽曲が収められており、Foxy Brown、AZ、Cormegaといったアーティストとの共演も話題を呼んだ。リードシングル”If I Ruled the World (Imagine That)”はLauryn Hillをフィーチャーし、第39回Grammy AwardsのBest Rap Solo Performance部門にノミネートされるなど、批評的にも高い評価を獲得。一方で、よりコマーシャルな方向性への変化は一部のヒップホップ・コミュニティから「セルアウト」という批判を受けることにもなったが、それすら本作の影響力の大きさを物語っている。Raekwonの”Only Built 4 Cuban Linx…”やJay-Zの”Reasonable Doubt”と並び、1996年を代表するマフィオーソ・ラップの傑作として、2024年にはBillboardの「100 Greatest Rap Albums of All Time」にも選出された。
2026年で本作はリリースから30周年を迎える。
▶︎”If I Ruled the World (Imagine That)” feat. Lauryn Hill “It Was Written”のリードシングルとして1996年にリリースされたこの曲は、Kurtis Blowの同名曲をベースに、Whodiniの”Friends”のビートをサンプリングしている。Hype WilliamsとRon Norsworthyによる豪華なミュージックビデオはNasにとって初めて主流メディアの注目を集めた作品となり、今でも90年代を代表するヒップホップ・クラシックの一つとされている。
▶︎”Street Dreams” アルバムの2枚目のシングルで、Eurythmicsの”Sweet Dreams (Are Made of This)”を引用したフレーズと、Linda Cliffordのサンプルが印象的な一曲。Hype Williams監督によるミュージックビデオは映画”Casino”へのオマージュとしてラスベガスで撮影され、俳優Frank Vincentや元Miss USAのKenya Mooreが出演した大作だ。この曲はNasにとって初めてBillboard Hot 100でトップ50入りを果たした楽曲となった。