ミシガン州デトロイト出身のShawn Marshall Mathers III、通称Eminem。1999年の『The Slim Shady LP』でDr. Dreに見出されメジャーデビューを果たした彼は、翌2000年5月23日、自身の本名を冠した3枚目のアルバム『The Marshall Mathers LP』を世に送り出した。初週売上178万枚という当時のソロアーティスト史上最速記録を打ち立て、Billboard 200では8週連続1位を獲得。最終的に全米ダイヤモンド認定(1100万枚以上)、世界累計3200万枚以上を売り上げた、Hip-Hop史上最大のアルバムの一つだ。
Dr. Dreがほぼ全編のプロデュースを手がけたこのアルバムは、Slim ShadyというコミカルなキャラクターをEminemが脱ぎ捨て、一人の人間Marshall Mattersとして突撃した作品だ。母親への怒り、元妻Kimへの憎悪と愛憎、突然の名声がもたらした孤独——すべてが剥き出しのリリックで刻み込まれている。あまりの過激な内容に米上院公聴会で槍玉に挙げられ、カナダ政府が入国拒否を検討したほど社会的騒乱を引き起こした。しかし批評家はそれとは真逆の反応を示した。Rolling Stone、Time、XXLなどが揃って2000年最高のアルバムに選出し、翌2001年のGrammy AwardsではBest Rap Albumを受賞した。
「Stan」という楽曲が生んだ文化的影響も計り知れない。熱狂的ファンを意味する”stan”という言葉は今や英語の辞書に載る公式な単語となり、Eminemがこの一曲でポップカルチャーの語彙そのものを書き換えたことを証明している。
▶︎「The Real Slim Shady」(2000)
アルバムの顔となったリードシングル。白いタンクトップ姿のEminemたちが病院を駆け回るカオスなMVは、MTV Video Music AwardsでVideo of the Yearを受賞。Britney Spears、NSync、Christina Aguileraら当時のポップスターを一刀両断しながらもユーモアたっぷりに仕上げた、Eminem節全開の一曲。
▶︎「Stan」(2000) feat. Dido
Didoの美しいサビとEminemの狂気的なリリックが融合した、Hip-Hop史上最も影響力のある楽曲の一つ。熱狂的ファンの手紙という形式で語られるこのナラティブは、ポップカルチャーに”stan”という新語を生み出し、オックスフォード英語辞典に正式収録された。