1996年8月27日、ニューヨークに偏重していたHip-Hopの地図を塗り替える一枚がアトランタから届いた。OutKast——André 3000(アンドレ・ベンジャミン)とBig Boi(アントワン・パットン)によるデュオ——のセカンドアルバム『ATLiens』だ。LaFace/Aristaからリリースされたこの作品は初週でビルボード200の2位を獲得し、のちにプラチナ認定を受けた。1992年にジョージア州アトランタのノース・クレイトン高校で出会った二人は、当初「2 Shades Deep」と名乗っていたが、間もなくOutKastとして活動を開始。1994年のデビューアルバム『Southernplayalisticadillacmuzik』でグラミー賞の「Best New Rap Group」を受賞し、その直後に制作に着手したのが本作だ。
名盤たる理由
1995年のソース・アワードでアトランタ出身のOutKastがベスト・ニューアーティスト賞を受賞した際、会場のニューヨーク勢からブーイングが飛んだ。「サウスはHip-Hopじゃない」という偏見が露わになったその瞬間、André 3000はマイクを握り締め「サウスはなにかを言わなければならない」と宣言した。その答えとして生まれたのが『ATLiens』だ。
本作でOutKastはデビュー作のG-ファンク的なサウスHip-Hopから大きく踏み出し、ジャズ・ファンク・レゲエを独自に融合させた宇宙的でオーガニックなサウンドを確立した。Organized Noizeとともに共同プロデュースし、ニューヨークのトレンドを追わない独自路線が批評家から高い評価を受けた。収録曲「Elevators (Me & You)」は全米チャートに6週間トップ10入りを果たし、「ATLiens」がセカンドシングルとして続いた。ローリング・ストーン誌の「500 Greatest Albums of All Time」(2020年改訂版)でも評価される本作は、サウス・ラップという概念を世界に知らしめた歴史的マイルストーンだ。
2026年8月27日でリリースから30周年を迎える。
▶︎ OutKast – “ATLiens”(1996)
アルバムのタイトルトラックにして第2シングル。宇宙をテーマにした独特のビジュアルと、アンドレとビッグ・ボイが交互にラップするタイトなマイクリレーが印象的だ。アトランタ(ATL)とエイリアン(Aliens)を掛け合わせたタイトルが示すように、既存のHip-Hopの文法に収まらない異形の存在としてのOutKastのアイデンティティが凝縮されている。
▶︎ OutKast – “Elevators (Me & You)”(1996)
アルバムからのファースト・シングル。ゆったりとしたファンク・ループの上に、幼少期の貧困から音楽的成功への道のりをパーソナルに綴ったリリックが乗る。ビルボードのR&Bチャートで1位を獲得し、OutKastを全米規模のアクトへと押し上げた一曲だ。シンプルなビデオながら、その誠実さとリリックの深さは今も多くのファンを惹きつけてやまない。